後遺障害を申請したものの、非該当という結果がきた。
弁護士まで立てて、申請したのに。
でも弁護士の助言で、14級9号認定を目指して「異議申立て」をすることになった。
一度非該当になった結果を覆して認定を得ることはかなり難しいらしい。
でも、私の場合は14級9号認定を勝ち取ることができた。
その勝因をまとめておく。
Contents
異議申立ての成功率は10%台

異議申立ての成功率は低い。
公表されているデータを見ると、毎年1万件以上の異議申立てが行われているが、そのうち成功した = 等級変更があった割合は10~15%程度にとどまる。
過去4年間のデータを見てみた。

データは損害保険料算出機構のホームページ「自動車保険の概況」より
10人中8~9人は等級変更なし、つまりほとんどの人は異議申立てをしても結果は変わらないという現実がある。
これだけ異議申立ての成功率が低いとはいえ、弁護士の「覆る可能性はあります」というアドバイスを信じて異議申立てを決意した。
もし異議申立てがうまくいかなかったとしても、やれることはやり切ったという自分の中での納得感を得たかった気持ちも大きい。
異議申立て成功のポイント

異議申立ての成功率は極めて低いはずだけど、私は異議申立てが成功し、非該当から14級9号認定を得ることができた。
成功できた秘訣としてはこんな風に考えている。
- 非該当だった理由を分析した
- 非該当理由を覆すのに適切な「新たな医証」があった
- 経験豊富な弁護士に依頼した
非該当だった理由は?

まず、私の後遺障害申請が非該当だったのはなぜなのか。
結果通知にはこう書いてある。

別紙に理由として以下のように書いてあった。
<結論>
自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。
<理由>
左第2第5中足骨々折後の左第2中足骨部に圧痛、左足背痛、左足膨張との症状については、提出の左足部画像上、骨折部の骨癒合は転位なく良好に得られており、後遺障害診断書上、自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見に乏しいことに加え、その他症状経過や治療状況等も勘案した結果、将来において回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いことから、自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。
また、左母趾、左示趾の機能障害については、前記画像上、同部に関節可動域制限の原因となる骨折や脱臼等の器質的な損傷は認められないことから自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。
以上
「非該当」と「認定」の分かれ目は?
ネット上で見つけた14級9号が認定された方の通知の<理由>部分を比較してみた。
14級9号が認定された方の通知
<結論>
自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。
<理由>
〇〇との症状については、提出の〇〇画像上、骨折部の骨癒合は転位なく良好に得られており、後遺障害診断書上、自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見に乏しいことからすれば、他覚的に神経系統の障害が証明されるとは捉え難いものの、その他症状経過や治療状況等を勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。
以上
「症状経過や治療状況等」とは
非該当の通知と認定された方の通知を見比べても、
という印象。
違っているのは、結論部分だけ。
私の場合、症状経過や治療状況を勘案した結果、非該当という結論に至ったらしい。
一方、14級9号が認定された方の場合、症状経過や治療状況を勘案した結果、認定という判断になった。
治療状況とは、「痛み」に対してどれほどの治療をしているのか?
ということです。
今回の後遺障害申請では、この2点に関して裏付ける客観的証拠が不十分だと判断されたと言えます。
7ヶ月間もの間週2~3回も通院を続け、定期的に痛み止めの処方を受けた記録があるというのに、それではまだ証拠が弱いという・・・
やはり厳しい。
私の場合は、正常に骨癒合している(=骨折自体は治っている)というのが弱みなのかもしれない。
「痛み」を裏付ける新たな医証
新たな医証があれば、覆る可能性はあります

新たな医証とは?
医証とは、医学的証拠のこと。
追加の医学的証拠を提出して初めて結果が覆る可能性が見えてきます
新たな医証とは、たとえば「追加検査」でCTを撮影したら以上所見が見つかった場合などがそれに当たる。ほかにも、初回申請時には不足していた情報を医師に「意見書」として書いてもらう方法などもある。
私の場合、そんな追加証拠なんてない・・と思っていた。
でも弁護士先生が教えてくれた。
自費で負担しても通院をするということは、それほどまでしてもまだ痛みがあることを強く主張できる材料になります。
そう、私は症状固定日を過ぎて保険会社からの治療費支払いが打ち切られたあとも、自費の3割負担でリハビリ(物理療法)に通っていた。
弁護士には、自費で通院した際の医療費領収書を新たな医証として異議申立てできると説明された。
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2019年1月30日交通事故発生
症状固定までの期間の治療費は保険会社が支払い。
私の自己負担はなし。
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2019年8月31日症状固定日
保険会社が治療を負担してくれるのは症状固定日まで。
この日で保険会社の補償範囲の治療は終了となる。
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2019年9月1日自費3割で治療開始
症状固定後も痛みが続いていたので、自費3割負担で通院を継続。
同じ整形外科に、リハビリ(物理療法)でマイクロウェーブ治療器とキセノン光治療器を10分ずつ当てる治療に通った。
ペースは週2~3回から少し落として、週に1回くらいになっていた。
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2019年12月28日通院終了
月に4~5回のペースで2019年12月末頃まで通院を続けた。
2020年の年始は仕事が忙しく通院できず、その後はコロナ禍になってきたので通院しなくなった。
ということで自費での通院を続けていたのは症状固定後4ヶ月間。
異議申立て書は弁護士にお任せ

症状固定後の通院実績を新たな医証として異議申立てをすると決め、あとは弁護士にお任せ。
10月中旬に後遺障害非該当の結果が出て、11月中旬に異議申立てをする方針が固まったので、11月中旬頃に自費通院の領収書を弁護士に渡して、異議申立て書を作成してもらった。
異議申立てに必要な書類
異議申立て書に決まった書式はなく、以下の必要事項を記載した上で自分で作成するらしい。
- 記載年月日
- 申立人の住所、氏名、電話番号、被害者との関係など
- 証明書番号
- 事故年月日
- 被害者氏名
- 異議申立ての趣旨
- 異議申立ての理由
- 添付資料
弁護士が作成した私の異議申立て書には以下のような内容が書かれていた。
異議申立て書の内容
① 症状の経過
- 骨折と診断され、治療を続けたものの、痛みが残った
- 症状固定前に、痛みが残っていたため、MRI検査も行った
- 事故当日から症状固定日まで継続して通院したものの、症状を残したまま症状固定と診断を受けた
これらの裏付けとして、通院先の診断書やカルテ等が添付されている。
② 継続的な治療
- 事故当日から症状固定日まで7ヶ月間にわたって、計85回の通院治療が行われた
- 1週間に3回という高頻度だった
- 通院先では、消炎鎮痛等の処置が行われていた
これらの裏付けとして、診断書や薬の処方の履歴がわかるものが添付されている。
③ 症状固定後の治療継続
- 症状固定後も痛みの治療のため、自費で通院している
- 症状固定後の通院でも、毎回痛みに対する消炎鎮痛等の処置が行われている
新たな医証として、症状固定後の自費通院の領収書が添付されている。
後遺障害異議申立て:審査期間は約5ヶ月間
異議申立て書完成から結果通知〜示談までの流れは以下のような感じ。
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2020年3月7日異議申立て書提出
書類が完成するまでに約3ヶ月もかかった。
弁護士の担当変更があったり、年末年始を挟んだりしていたため時間がかかってしまった。私も弁護士側に特に催促など一切しないで待っていたというのもあるかも。2020年3月上旬、弁護士が作成してくれた異議申立て書を自賠責保険会社宛に発送。
数日で受理され、審査が開始された。
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2020年4月24日医療照会
異議申立ての審査機関から、私が通院していた整形外科クリニックへ医療照会が行われた。
回答があり次第審査が進むとのことだったが、弁護士の話によるとクリニックからの回答が遅めで1~2ヶ月ほどかかっていたらしい。
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2020年8月3日異議申立て結果通知
弁護士から電話があり、異議申立ての結果が来た。
結果は、14級9号認定!!
異議申立てが成功!!!
弁護士が示談交渉の準備を始める。
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2020年8月6日自賠責から後遺障害保険金振込
後遺障害が認定されると、自賠責基準の後遺障害慰謝料+逸失利益として75万円が振り込まれた。
最終的な示談はまだだけど、自賠責基準の金額は先に振り込まれるらしい。 -
2020年8月12日示談交渉開始
弁護士が賠償金額の洗い出しを終え、示談交渉を始めると連絡を受ける。
もう取れるものは取り切ってくれ精神でお任せした。 -
2020年10月12日示談内容の合意
弁護士から妥当な金額での示談がまとまってきたと報告。
保険会社もなかなか渋ってくれたらしい。保険会社とのやりとりは少なくとも5往復はあった様子。詳細を聞き、私も納得できる金額だったため同意。
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2020年10月19日示談金振込
保険会社から示談金が振り込まれた。
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2020年10月21日示談完了
弁護士から今回の交通事故案件の終了のお知らせと書類一式が届いた。
これで交通事故対応は全て終了。
異議申立て書が受け付けられてから結果通知までに約5ヶ月を要した。
ただ、ずっと審査中だったわけではなく、審査機関からクリニック宛に医療照会がおこなわれて、クリニックが返答するのに2ヶ月くらいかかってたということだから、実際に審査に使われた時間は2ヶ月くらいになるのかな。
とはいえ、長い。
でも、異議申立てをしてよかった。
後遺障害が認定されたことで、後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができ、賠償額が大きく増えたから。
